平成19年度 名香の会

2007年度 名香の会

昨年に引き続き、本年も当研究所にて名香の会を催しました。
この会では、「お香を楽しむ」ことを本旨といたしまして、組香によって聞きわけたお香の数を競います。
皐月の名香の会の組香は以下の三つです。

舞鶴   勅銘香 後西天皇
春日野  勅銘香(百二十種名香)後陽成天皇
楊貴妃  十種名香

三種のお香をお聞きいただいてから、四番目のお香が先の三つのいずれなのかをあてていただきました。
同じ香木でも、前回やすやすとお聞きわけになった方が、お外しになることもございます。名香について記された御本がいくつかございますが、香木の五味それぞれを、著者によって異なる捉えかたで表現しておられるようです。香道の追究が御専門の方々も、それぞれの感性で表現しておいでになる、ということでしょう。感性によるところの大きい、「お香を聞く」ことの奥深さ・おもしろさを実感する瞬間と申しましょうか。また、勅銘香を前にしてあれこれと思いをめぐらせるのも、楽しみの一つです。
「舞鶴」をご命名あそばした後西天皇と「春日野」をご命名あそばした後陽成天皇とは、孫と祖父の関係にあたっておいでになります。豊臣から徳川へと時代の移り変わるころをお過ごしあそばした後陽成天皇と、安定した徳川幕府の時代が始まったころをお過ごしあそばした後西天皇では、感受性に違いがおありだったのではないか、などと考えていると、それぞれの香木から聞こえる芳香の違いにことさら興味を惹かれるように思われます。そのように勅銘の由来を考えてあれこれと調べたりするうちに、有職の世界に立ち返ることもあり、それでまたつくづくと、文化とは一側面からだけでは計り知れないものだと思わずにいられません。


組香による心地よい緊張感をお楽しみいただいてから、皆さまには直会(なおらい)にもご参加いただきました。この日はよく晴れておりましたので、庭に面した風とおしの良いお部屋に、はしりものの鱧を主役として、かご盛り・御造り・炊き合わせ・御椀・御飯・香物などをご用意いたしました。
初夏の青々とした空気を感じながら和やかにお食事をお召し上がりいただく一時は、会を催した者にとってもまことに幸せな時でございました。

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