平成13年度 観櫻会

平成13年4月1日(日)、東京・目白台の「蕉雨園」にて、当研究所恒例の『観櫻会』を今年も催しました。

衣紋をはじめ、雅楽・お香・お茶、またその他の遊びなど、例年ご好評をいただく演目もさることながら、隣接する「椿山荘」の庭園へも、蕉雨園の庭園から直接に行き来することが昨年から実現し、ご好評を得ております。

蕉雨園


●受付・正面玄関にて

蕉雨園は、もと明治の元勲・田中光顕伯爵の邸宅でした。
本館はどっしりと落ち着いた唐破風屋根2階建ての和風建築です。


●庭園

庭園の主ともいうべき桜の大木もちょうど満開、広々とした芝生の上には緋毛氈を敷いて、舞楽管絃の舞台とします。
大傘の下の床几ではお茶を供しました。

●本館の廊下より庭園を臨む

庭園をとりかこむように木立が繁り、写真右手から坂を下ると「関口芭蕉庵」に出ます。
蕉雨園の敷地の大部分は、「都心に残る最後の武蔵野」とも呼ばれています。

装束-男性


●束帯 黒袍/赤袍

男性の正装である「束帯装束」です。
色は地位によって異なり、「黒袍」は一位~四位、「赤袍」は五位の料となります。
頭には「冠」をかぶり、手には「笏」を携えます。


●狩衣 2種

「狩衣」は公家の褻(け)の装束つまり普段着です。
頭には烏帽子(えぼし)を被り、末広を手にして、指貫(さしぬき)の袴を穿きます。
文様や色目には着る人の好みが反映します。


●水干

水干(すいかん)は狩衣から派生した装束ですが、上衣の裾を袴の中に着込めるところが特色です。
写真の水干は右袖と袴の左側とが切り換えになって錦を用いており、この形式は「片身替わり」と呼ばれています。
このような生地使いも、伝統的なものなのです。

装束-女性


●十二単

宮廷装束の中でももっとも美しい「十二単(じゅうにひとえ)」は女性の正装です。
正式には「五衣唐衣裳(いつつぎぬ・からぎぬ・も)の装束」と呼ばれます。
いちばん上に着ている薄紅色のが「唐衣(からぎぬ)」、
その下の萌黄色(今で言う緑)が「表着(うわぎ)」、腰から後ろに引いているのが「裳(も)」で、これらには「禁色(きんじき)」という決まりがあります。
手には「檜扇(ひおうぎ)」を持ち、髪は「おおすべらかし」に結います。


●小袿 3種

女性の準正装とも言うべき装束が「小袿(こうちき)」です。
十二単の表着にも劣らない美しい生地を用います。
当日は着装をご披露する合間に、御希望の方にお着せして写真をお撮りしました。
上の写真の白い小袿をお召しの方の髪は見えにくくなっていますが、十二単の「おおすべらかし」を別名「お大(おだい)」ともいうのに対して張り出しが穏やかなので「お中(おちゅう)」と呼ばれます。
紅梅色の小袿をお召しの方の髪は、平安時代以来の形で「垂髪(すべらかし)」といいます。


●采女装束

 「采女(うねめ)」とは、もともと天皇の食事に奉仕する女官を言いました。
現在では大嘗祭のような神事にしか使われることのない珍しい装束です。
額から左右前後に「日蔭糸(ひかげのいと)」を垂らします。


●細長 2種

童女の服には衽(おくみ)のないものがあり、これを「細長」と呼んでいます。
髪に着けているのは魔除けのおまじないで「物忌(ものいみ)」と言います。

衣紋-着装


●男性 束帯黒袍(下襲) / 女性 十二単(五衣)

装束を着装しながら、有職故実や衣紋道のことについて御解説しています。
着付けをする人を「衣紋者」と呼びますが、この衣紋者も異なる装束をお目にかけました。
男性の後ろの衣紋者は「直衣(のうし)」、前の衣紋者は「直垂(ひたたれ)」を身に着けています。


●男性 束帯赤袍(袍) / 女性 十二単(打衣)

女性の衣紋者は、「小袿」を着て「切袴」を穿き小袿の裾をからげる「おかいどり」という着方をして、衣紋を奉仕しています。
横にちょこんと坐っているのは、「細長」姿の女の子たちです。
大広間をとりまく廊下も使って、大勢の方々に着装を御覧いただきました。

香席


大広間で衣紋(装束の着付け)を御覧いただくのと平行して、別の部屋ではお香を聞いて遊ぶ席も設けてあります。
席の後ろには蕉雨園の広々とした庭園がひろがり、馥郁とした香りがただよいます。


今年の香席は「重ね色目香」という遊び方で、「紫」・「青」と名付けた2種類の香を使いました。
衣紋道・有職故実の世界では、白と紫の組合せを「桜」、白と青(今で言う黄緑)の組合せを「卯の花」と呼びます。


●証歌

 さくら色に衣は深くそめてきむ 花のちりなむのちの形見に  紀有朋
 時わかず降れる雪かと見るまでにかきねもたわに咲ける卯花  よみ人しらず

香二種 「紫」・「青」
試香 各一包
本香 一包

舞楽・管絃


●蘭陵王 厳めしい仮面を用いた勇壮な曲です。

庭園の芝生の上では、雅楽(舞楽および管絃)をご披露します。
今年の演目は、以下の4曲でした。
 ・舞楽 振鉾 (えんぶ)
 ・舞楽 蘭陵王(らんりょうおう)
 ・舞楽 延喜楽(えんぎらく)
 ・管絃 長慶子(ちょうけいし)


●延喜楽

春を寿ぐにふさわしいめでたくも雅な曲です。


雅楽を間近に楽しむ機会はあまりないと、皆さまよろこんでおいででした。

お茶・ワイン・点心


●茶席(五月雨庵)室内

時間の決まった演目とは別に、ぶらりとお立ち寄りいただこうというお席もございます。
庭園をはさんで本館の向かいに、五月雨庵という離れがあります。


 ●茶席(五月雨庵)入口より室内を臨む

お茶は庭園の床几までお運びしますが、お好みに応じて室内でもお出ししております。


●ワイン席
 
大広間(衣紋)と香席との間にワイン席を設けてあります。
よろしかったらおいしいシャンペンなどどうぞ。
別室には桜にちなんだ銘酒をそろえた「日本酒席」もございます。


●点心席

座敷では点心として、季節感あふれる会席料理をお出ししました。
お仲間と御一緒にどうぞごゆっくり。

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